【−2】焦げ臭い

怪異としては、体験者が中古のゲームソフトを開封した際に“焦げ臭い”と感じたことである。
だが、この怪異を“焦げ臭い”の一言で済ましてしまったために、完全に主観の罠にはまってしまったとしか言いようがない。
油が燃えた時の匂いか、プラスチックが溶けた時の匂いか、木材などが燃えた時の匂いか、この記述があるかないかだけでも印象は大きく変わってしまう。
さらに部屋中に臭いが充満したのか、わずかに鼻をかすめる程度の臭いだったのかによっても変化は生じるだろう。
結局そのような情報記述がないために、体験者の錯覚なのか、客観的に見ても異常事態だったのかという判定が出来ないのである。
そのような曖昧なところにきて、ケースに入っていた写真(消防署関係の写真だが、火事現場のものではない)を捨て、ケースを替えたら臭わなくなったと書いてしまっているために、全く気のせい、あるいは写真そのものが煤けていたとも取られかねない。
体験者が不思議と感じた理由を読者に提示していないために、体験者の主観的思い込みだけで終わってしまいそうな印象なのである。
むしろ写真の存在の方が薄気味悪さがあり、そちらの方に焦点を当てても良かったのではないだろうか。
ただし、ゴミ箱にあっさり捨てている当たり、禍々しいものは何もなかったように見えるが…
いずれにせよ“変な話”で終わってしまった感が強い。