【−2】騒がしいやつら

この作品も分類すると、いわゆる“夢オチ”ネタでしかない。
文章内容から推察すると、体験者が鳥の声を聞くのはこれが初めてではないというようにとれるが、その部分が明瞭でないために単なる“寝ぼけていたせい”という印象の方が強くなってしまった。
少しばかり長くなるが、複数回の体験であるというようにいくつかの事例を取り上げて引っ張った方が、疑念をはらせる可能性が高まったのではないだろうか。
いずれにせよ、レム睡眠時(目覚めの数瞬間前の状態)で体験する怪異には何らかの客観的な証拠いうべきものが必要だと思う。
この作品の場合、鳥の声を直接翻訳したような、少々トチ狂ったような人語を書くことによって、それなりに“普通の人間が喋っていたのを聞き違えた”ことに対する疑念は払拭出来ているように見えるが、鳥そのものが喋ったかどうかの確証にまでは至っていない。
特に、鳥の鳴き声を聞いて夢の中でそれを別の音(ここでは人間の声)に変換してしまったという疑念に対する対応は全く出来ていないと言えるだろう。
決定的な証拠ではないにせよ、単なる夢や錯覚と短絡的に読者に印象付けさせないような物証の提示が、このパターンでは必要不可欠ということに尽きるだろう。