【+1】独り寝

間違いなく“生霊”の怪異であると推断するのだが、いかんせん、文章的な問題でそのように思えないと感じてしまうところがある
まず体験者が“生きて肉体を持った人ではない”という判断に至った理由が判然としない。
感触や雰囲気で判るという点は納得がいくのであるが、具体性に欠けるために逆に説得力を失っているという印象である。
読者が“生霊”であると確信する非常に重要な部分であるので、ここを適当に語ってしまったのは厳しいと思う。
また最後の部分で彼氏が言葉を濁しているのであるが、これも昨夜の存在が“生霊”であるかの判断が弱いところで読まされると、完全にはぐらかされたという印象しか残らない。
おそらく彼氏は自分の幽体が飛んでいって何をしたのか明らかに知っているために、言葉を濁したのであろう(たぶん夢のような状態で自分の行動を客体視していたか、あるいは体験者の部屋に現れた“生霊”そのものが彼の意識体だったのか、いずれかの形で確実に自分の行為を認識していたから“照れた”のだと思う)。
要するに、書き方が十分でないために、読者がミスリードしてしまったというところである。
また、体験者が“生霊”が彼氏であると気付く瞬間についても、かなり強引な展開が目立つ。
一度彼氏ではないという感じで直感的に否定し、相手が顔を近づけてきても気付かず、それから少し時間が経過してから“肌の感触、顎の線”というディテールでようやく気付くという流れは、かなりぎこちない。
文章で誤解を招くような書き方があるため、ある程度減点とさせていただいた。