【+3】滞納者

ネタ的にはやはり【平山怪談】を彷彿とさせるものがあり、<特殊なお仕事関連+グロっぽい表記+読者をも圧倒する連続怪異>という部分はコピーではないにせよ、類似性が高いところである。
ただし似たようなパターンになってくると、どうしても【平山怪談】の引力に引きずり込まれ、ある程度の比較を受けることになってしまう。
率直に言うと、パンチ力が弱いということに尽きる。
表記の面で言うと、例えば、恐怖感を煽るグロ描写の言葉の一つ一つが執拗なまでに嫌悪感を与え切れていない。
やはり通り一遍の言葉ではなく、他に類を見ない比喩を多用して、いわば読者の想像力を上回るような言葉が一つでも多く書けるかという一発の破壊力の面で弱さを感じる。
また構成の面で言えば、連続する恐怖を均等に書いているために、徹底的に書き込む部分(クライマックス)が作り切れていない。
「肝だ」と思ったら、その部分に恐怖を煽る工夫をこれでもかと詰め込むエゲつなさが足りない。
室内の場面、エレベーターの場面、それぞれ恐怖感は出せているものの、ヤマ場になり切れていない。
塁上にランナーはたくさん出るが、タイムリーヒットが出ないような状況になってしまっている感がある。
プロ作家と比べれば詰めの甘さはいくらでも出てくることは致し方ないと思うが、向上のためにはその技量に追いつく必要があるし、ある程度使いこなせる力量も持たねばならない。
大ネタを掴んできただけに少々厳しい注文をさせていただいたが、ただそれなりに読める作品だと思うし、逆に工夫次第でもっと凄味のある内容に化ける要素も持っているとも指摘出来る。
とりあえず一定水準の作品には達していると思う(このネタでダメ出しされたら、立つ瀬もないだろう)。