【−1】怒風

神様と不条理という全く相容れないコンセプトによって怪異が成立しているために、読む者を困惑させるとしか言いようのない作品だと思う。
いわゆる“神様系”怪談の観点から見ると、倉本さんの行動は全く理解不能であり、何故唐突に社の扉を開けて神を冒涜する言葉を発したのか解らない。
気まぐれからと言ってしまえばそれまでであるが、その行動原理なり目的が作品内で明確にされていないために(元々そういうちょっと電波な性格であるとか、ここの神様に願掛けしたのに見事に裏切られたなどの理由があれば見方は変わるかもしれないが)、その異常な行動が変に目立ってしまっている。
逆に“不条理系”怪談としてみてしまうと、神様の神罰覿面の部分がどうしても引っ掛かってしまう。
また不条理の根源が生身の人間の側にあるために、これも何か奇妙にうつってしまうのである。
結局のところ、この倉本さんというキャラクターの説明がないまま異常な行動が書かれてしまっているために、因果系の話が大半の“神様系”の話であるにもかかわらず、何か釈然としないものを感じ取ってしまうのである。
もしかすると作者はそのような雰囲気を出そうと意図したのかもしれないが、最終的には唐突感だけが目立ってしまって、悪い意味で“何か裏であるのでは”という微かに奇妙な印象だけが残ってしまったように思う。
もしそのような印象を出したければ、もっと倉本さんのキャラを確立させる必要があったと思うし、作者による“思わせぶり”の記述もあった方が親切だったように感じる。
もし裏に横たわる因果を垣間見ることが出来れば、相当面白い内容になっていたかもしれない。