【+5】女伝え

“乳歯”や“小動物の頭蓋骨”や“竹筒に入った木片”といったおどろおどろしい呪術的な道具に対して、“プチプチ”や“アリナミンの瓶”や“池袋のマック”や“レッスンバッグ”というアイテムを配することによって、奇妙なバランスを保っていると言える作品だろう。
全体的な雰囲気も呪術を扱うわりには軽妙であり、ごく自然な感じで“今風”の日常というものを作り出している。
呪術というと前近代的な存在であり、現代生活の中でも意識的に隔離され、怪談として取り上げるにしても非常に閉鎖的なフィルターが掛かることが大抵である(例えば「現代においてもなおこんな呪術が存在しているのか!」という感想は、まさしくそういう心理が作用しての発言であるだろう)。
この作品はそのような“常識”を打破する意図を多分に抱え込んでいると言えるだろう。
それ故に敢えてギャップのあるシチュエーション、つまりごく普通の日常シーンの中で呪術が息づいていることを明確に示す目的で、このような雰囲気を文章によって作りだしたのだと思う。
しかしながら、ただ軽いノリだけではなく、怪異については非常にしっかりとした書き方になっている。
この内容があって初めて、尋常ならざる道具、禁忌を有する道具という負の部分の強烈さがストレートに出てくる。
作者自身が何を書けばどうなるのかを見越した上で、全てをコントロールしているという印象が非常に強い。
そして作品上で大胆な試みを見せつけ成功させている点も踏まえて、最高得点に近いもので評価させていただくこととした。