作者別短評(3)

【No.18】
良くも悪くも文章が素直すぎるように感じる。
ちゃんとした書き方で、描写や説明の文も明瞭に思うのであるが、全体の流れを見ていると“引っ掛かり”というものに欠けているのである。
それ故に、怪異の肝部分の印象が薄くきれいに流れてしまっているので、劇的な怪異譚になればなるほど何か物足りなさを覚えてしまった。
『おみそれしました』のような小さなネタで勝負した方が有効だったような気がする。


【No.19】
厳しい言い方になるが、まだ怪異の本質を的確に掴み取ることが完全ではないという印象である。
またその延長線上にある問題として、怪異を活かすための書き方が上手く選択できていないとも感じる。
まず肝となるべき怪異を明確にした上で、それが導き出されるようにストーリーを逆から展開させて組み立てるなどの工夫が必要だと思う(書き方のスタイルを見ていると、“迷い”というものを作者自身が持っていると感じてしまう)。
とにかく上質の“供給源”があるのだから、まずきちんと“あったること”を書けばよいだろう。


【No.21】
“記録文”を書かせるとかなり達者だと感じるのであるが、リアルタイムで状況の移り変わりを書くと途端に底が割れてしまう、かなり偏りのある書き方の作者である。
“実録怪談”は一つのスタイルとして確立されているので、そこに特化して書いた方が個性が活きると思うし、能力も発揮できるのではないだろうか。
ただし、怪異の本質を把握するという部分では、まだまだ改善の余地があることは確かである。


【No.22】
作者同定で初めて判る事実もあるが、この作者も同定作品を見て「なるほど」という感想を持った。
この作者の場合“あったること”を伝えるための文章だけではなく、非常にリリックな雰囲気を備えた文を巧みに使っているのが分かる。
問題は、そのリリックな印象がリアルな“実話”とどう絡み合うかによって、作品にムラが生じているという点である。
総体的に言うと、リアルな印象を殺していると思われる部分の方が強いと言えると思う。
個性を活かすためにはバランスが肝心というところになるだろう。


【No.23】
怪談作品を書くという点において一日の長があると実感できる力量である。
ネタをいかに活かすかを考えて作品が練られており、キャラクターの作り込みも、表現のバリエーションの変化も全て“怪異を際立たせる”目的に従って作品に組み込まれているという印象である。
問題点は投稿数の少なさ以外にはないという感じである。


【No.24】
23同様、怪談の書き方を確実に手中に収めている作者である。
しかも投稿数とネタの強烈さにおいては23を上回っていると言っても良いだろう。
少々饒舌に走ってしまっていると思う部分もあるが、高い平均点を取れるだけの内容だと納得できるレベルである。
せめて応募数が二桁に乗せていれば、かなり期待できる注目作者であったのだが。