来年の予想

◆怪談系はブレイクの予感
今年は実話・創作問わず、ネット公募の大会で頭角を現した人物が結果を残した。質の高い書き手が増えると、その分だけそのジャンルに自力が付く。そしてさらにライバルという名の切磋琢磨、後進への刺激が顕著になればますますもって言うこと無しである。現在の怪談界はある意味それに近い状況が出来つつあるように見える。来年に期待する人物は、実話では深澤夜氏、創作では田辺青蛙氏。当然実力と運がなければやっていけない世界なので、どうなるか分からないが、おそらく彼らを中心にして新しい力は伸びていくことになるだろう。特に田辺氏には、毎年“新人が輩出しない”とぼやいていた妖怪系での伸びしろを大きく期待している(先日、地元の京都新聞の書評欄で『生き屏風』が掲載されていた。妖怪文化に理解のある新聞なので、何かのきっかけになりそうな気配)。また実話ジャンルでも【超−1】上位ランカーの奮起を期待したい。来年はとにかく大御所クラスから新人まで目が離せないというのが本音である。これで平山氏あたりがデカい賞でも取ったら、凄いことになるかもしれない。

◆UMAは侮れない
今年の“ツチノコ騒動”を見れば分かるように、やはりUMAの潜在的人気は凄いものがあると改めて実感した。特に最近ではネットの動画配信などで世界の情報がすばやく伝わるために、ちょっとしたことで爆発的に注目を浴びる可能性が高い(心霊も含めてこの動画の存在はオカルトにとっては大きい意味を持つと考える)UMAは常時スクランブル態勢という印象である。
ちなみに、上記のツチノコ騒動で一人勝ち状態になったのが山口敏太郎氏。これ以降メディア露出も増えて、オカルト関係の専門コメンテーター(要するに“オカルト作家”の冠)の地位を勝ち取った感がある。来年も肩書きに見合うだけのネタと著作を期待したい。

◆予言・都市伝説は低調
今年一番ガッカリだったのが、ジュゼリーノの予言であった。地震が起こると言ってははずしまくり、9月にはとうとうデマ扱いにまでなる始末だった。予言することで起こらないようにしているのだという説もあるようだが、そのくせ予言が的中するとそれを誇示するから、インチキ呼ばわりされてしまうことになる。来年もジュゼリーノ関連の書籍は多数出されると思うが、ズバズバ的中しない限り世間一般の信用は回復しないようにも思う。
都市伝説関連も関暁夫の続刊がパッとしなかったように、かなり飽きられているように感じる。一部若手芸人のネタ披露の場(都市伝説と創作ホラーっぽいネタをミックスして紹介する形式)として盛り上がることはあるが、流行のシーンからはかなり遠くなってしまったようである。というよりも“都市伝説”という言葉の定義そのものが広がりすぎて収拾がつかなくなっているのが現状である。来年もこの混沌とした状態が続くと思われる。そして本来あった“都市伝説”という概念に基づく研究は後退するのではないかとも、悲観的観測もしている。

◆「語り」という新しいジャンル
個人的には手を伸ばしてはいないが、“オカルトラジオ”というものが流行りつつある様子。ネット世界で文章を書いて公開するという作業が当たり前となったが、今度は音声による公開が簡単となったために“文は書けないが喋れる”という層が新たに参加しだしているという感じである。これからどういう展開になるか分からないが、新しいジャンルとして大いに注目すべしというところである。ここから文章を書き起こして素晴らしいネタが記録されることを望む。
それと同時に怪談をライブで語る面々が増えている。今年を振り返るとここにも素晴らしい人材が揃ったという感があり、個人的には影ながら応援したいと考えている。とにかく来年のカギを握っていると言っても過言ではないジャンルである。

◆その他は…
スピリチュアルも落ち着いた感があり、来年も善戦はすると思うが、徐々に一般受けしない部分(即ちカルトが強調されすぎたり、知識的に敷居が高くなりすぎたりする状況)が顕著になっていて、コアな信者とそうでない一般人に二極化されていくように思う。
そしてUFO関連についても、余程ニュースになるような事態がないようであれば、それなりにそれなりにである。


今年は個人的に非常に刺激の多い一年であった。このブログもアクセス数が10万を突破した。3年連続で【超−1】のベスト講評者に選ばれる栄誉に浴し、また色々な場面でランカーの皆さんと顔を合わすことも出来た。そして何よりの収穫は8月に【てのひら】作家の皆さんとお会いして話が出来たこと。ここで受けた刺激は並大抵のものではなく、ある意味視界が開けたという自覚を持つことが出来たほど素晴らしい力を得た(【西日本怪談同盟】発足の際には、可能であれば是非とも名を連ねたいと思うほどである)。とにかく出来るだけ長く、多くの方々と一緒に大きな御輿を担いでいたいという気持ちにさせてくれた一年であった。
そして10万アクセス突破のお祝いということで、本体よりあのHNを譲ってもらうことになった。活動を地道にやっていれば名前など後からついてくるものだと思うのだが、やはり自分にとっても愛着のある名前である。個人的にもないよりはあった方が嬉しいということで、来年からは【二代目・逸匠冥帝】として名乗り、活動させていただきたいと思います。先代よりは馬力が小さい故に大馬鹿なことは出来ませんが、今後とも御贔屓にしていただけば幸いです。

では、来年も『幽鬼の源』は続きます。