【0】笑い声

怪異そのものは定番物に近い小粒なものであるが、ただそれに見合った簡潔な書き方になっているために、さほど悪い印象はない。
しかしながら一点だけ重要な情報が抜け落ちていると思った。
体験者の性別である。
無防備と言っていい風呂上がりの場面であり、あやかしの声が若い男性となれば、体験者自身の性別がはっきりと判るような表記が欲しかったところである(特に女性の場合は絶対必要条件だと思う)。
それだけでずいぶんとインパクトは変わってきたのではないかと想像する。
そして「ひゃーひゃー」という声であるが“はやし立てる声”であったとしても、少々違和感が残る。
しかもその違和感が間が抜けている印象しかないから、余計に始末が悪いところである。
ここは表記を変えないと、あやかしそのものの持っている悪意の印象も吹っ飛んでしまうだろうし、やはりオノマトペの扱いは要注意ということである。
ただ全体の印象としては悪いものではないと思うので、可もなく不可もなくというあたりの評価である。