【−1】クールドライブ

怪異の肝となる描写部分が非常に理解しづらいために、光景のイメージがほとんど出てこなかった。
殆どの講評で指摘されているように、運転手が両手であやかしの腕を掴んでいたら、誰がハンドルを持っているのかが全く説明できていないのが最大の難点。
あやかしがハンドルを握っていてそれを運転手がふりほどこうとしていたのであれば、何となく理解できるのであるが、それでもかなりあやふやな印象は拭えない。
また“ろくろっ首のように伸びた”手の形容も何となく分かったような分からない描写であり、説明はしているのだが要領を得ないというのが正直なレベルである。
結局のところ、目撃者も一瞬の出来事であるために(おそらく真横を通り過ぎる僅か数秒の光景を語っているのだと推測する)、正確に見たという感じではないのだろう。
冷静な観察ではないところに、加えて書き手が非常に拙い書き方をしてしまったために明瞭さに欠ける描写になってしまったと考える。
助手席の女の容姿などが書かれていないのは、そこまで見る時間がなかったことに由来するのだと思う。
一瞬の目撃談の場合、どれだけ冷静にあやかしの様子を描写して説明するかが本分である(決して精緻に書くのではなく、どれだけ読者の印象に残る書き方に徹するかがポイントである)。
一目見てそれがあやかしであると判断できる様子を活写することに失敗している以上、やはりマイナス評価はやむを得ないところである。