著者別短評の四

今回も愚痴なしでひたすら短評を…

No.15
1作のみの投稿のため、特に語ることなし。

No.16
2作のみの投稿のため、特に語ることなし。

No.17
2月末から3月末にかけて32作の投稿。同定で並べられた作品群を見て、思わず「因果の鬼だ…」と絶句した。『深淵』『涙壺』『砂の縁(えにし)』といった因果物の典型とも言える作品がずらりと並ぶ。他にも凶宅ネタや血縁の因業が絡むと思しき内容が並んでおり、圧巻と言うべきところである。しかしこれだけの因果物が並んでいるのだが、飛び抜けた傑作がほとんどないのも事実である。一言でいえば、因果を確信させるためのパーツが弱い、例えば、決定的な怪異がない、状況証拠ばかりで推測しているなど、中途半端な提示で終わっている内容が多いのである。逆に因果の存在が希薄な怪異に、強引に因果関係を作り出そうとして失敗している作品も散見できる(『黒ギロチン』『酔進』『魅入られて』など)。全般的に評点が低いのは、評点デフレの一番厳しい時期での投稿にも原因があるが、やはり上質のネタを活かしきれなかったところも大きいと言えるだろう。因果物は徹底してダイレクトに因果の根拠を示し、そうでないものは“あったること”の提示にとどめるなど、怪異の本質に合った展開を作り出すことが向上のポイントになると思う。

No.18
2月前半のみ10作(有効作品数9)の投稿。書き手自身がかなり不思議な体験をする機会に恵まれるといった血統を持っていると推測する。その直接体験はなかなか希少なものがあると思うのだが、そういう体験が多いが故に、却って何でもそのように現象を見てしまう習慣が身に付いてしまっているようにも見える。『小学校の示板』や『巣くわれて』などはその典型的な失敗例であるだろう。また文体が非常に硬質で、説明口調(しかも一番お堅いレベル)の書きぶりがアクセントとなっている。上手くはまれば理知的で説得力を持つが、評点の低い作品では“上から目線”の印象が強く余計に点を下げてしまった感もある。自身の体験談に特化すれば、面白い結果になっていたかもしれない。

No.19
3月後半に4作の投稿。特徴は恐ろしいまでの饒舌体。とにかくどうでもいいことまで(というよりそちらの方がメインではないかと疑ったりする)次々と体験者に語らせる。かといって怪異そのものは取るに足らないレベルのものばかり、さらにはそれの検証がほとんどなされていないというお粗末な内容である。要するに、無駄なお喋りにつきあわされているという印象が、同定後にさらに強烈になってしまった。怪談を書く以前の問題として、このような目的のない饒舌なノリの文体が支持を得られるのか再考した方がいいとさえ思う次第である。もしこれが怪談の作法上有効な手段であると思って書いているのであれば、即刻よした方が身のためであることも付け加えておきたい。

No.20
スタート時から3月中旬まで満遍なく61作の投稿。1日1作に換算してまだ余るという大量投稿である。ただこの物量作戦も功を奏したというレベルとは言い難い。1作あたりの平均得点が、全応募作の平均とほとんど同じというところに、この物量線の結果が如実に現れていると思う。大量投稿には最大級のリスペクトを表すが、結局粗悪な内容のものまでが投稿しなければ達成できないということになれば、結果的には書き手自身にも良い影響を与えないと思うところである。ただ圧倒的な数に隠れているが、個人的にこの書き手の真の実力は、これだけの量をこなしながら作品の質に大きなぶれがほとんど見られないところにあると感じている。大ネタもない代わりに、滑ってしまいそうな小粒なネタでもそれなりに読ませるものに仕上げてしまう。講評陣でこの書き手の作品評点が大きくぶれていたら、自身の批評眼の方を疑った方がいいかもしれないと思うほどである。華はないが、相当の異能ぶり(勿論最大級の誉め言葉)と断言したい。

No.21
期間中満遍なく17作の投稿。期間を通して文章力が向上した書き手である。基本的にはかなりの饒舌体を駆使するのであるが、『ぬばたまの…』『プラズマ野郎』といった破綻すれすれの文章で読んでいる方がハラハラしていたのであるが、それが“カヤ坊シリーズ”が始まるあたりからかなり落ち着きを見せてきたと言えるだろう。正直なところ、文章技術については不安定なところがあり、長くなると綻びが生じたり、短くすると情報漏れなどの不備もまだ指摘されそうなレベルである。だがその技術的な問題を黙らせるだけのネタの面白さもあると思うし、『水底より』『宿る』で見せたようにしっかりとした文章で書かれた作品は実に上品な雰囲気を醸し出す妙作にもなる。そして何よりも最終作が最高得点という、理想的な伸び方をしている。文章力が安定すれば、非常に興味深い書き手の一人となりうるだけの力があると思う。

No.22
2作のみの投稿のため、特に語ることなし。