まとめ

まずは御礼から。
今年もベスト講評者に選出されました。
大会を運営されておられる主催者さまをはじめ、参加者各位に感謝いたします。
投稿された作品があって初めて成立するのが講評ということで、とりわけランカーの皆様には厚く厚く御礼申し上げる次第です。


まとめということで、まず私の[著者推薦]内容について。
私が推したのは【No.7】氏であったが、今回ほど悩みに悩んだことはなかった。
実は、送信数分前に推薦する人物を入れ換えている。
正直に言うと【No.10】氏から乗り換えているのである。
理由は“好みの問題”であり、それ以外に他意はないわけである(自分の好き嫌いで最終判断を下したのは今回が初めてのこと、それだけ私の心の中ではしのぎを削っていたのである)。
ただ、私の好みを左右した“劇的すぎる”という印象については明確にしておいた方が良いかもしれないと思うので、少々長くなるがここに記しておきたい。
“劇的”な書き方とは、言うならば“やや過剰な読者サービス”を含んだものと認識している。
それは言わずもがなの一言であったり、駄目押しの一言であったり、誇張された表現であったり、多分に感情的な表記であったりする。
例えるならば、言を尽くした文章から読み手が本質を掴んだところに、書き手がそれを畳みかけるようにまた言を尽くして説明してくる状況である。
ある意味“くどい”とか“厚ぼったい”という感情で言い表される印象である。
別の言葉で言い表すのであれば“引き算が上手く機能していない文章”なのかもしれない。
グイッともう一押ししてくるのは、筆法としては拙いものではないと思う。
しかし“文章を巧みに間引く”書き手と比べられたら、やはり怪談読みは“引き算”の書き方を無意識のうちに支持してしまうだろう(怪談の妙とは濃密さよりも希薄さの方に分があることは言うまでもない)。
このあたりを見事にくすぐられたという次第である。
あと、期待の星として挙げたのは【No.21】氏ということで。


今年の大会はとにかく荒れるだけ荒れた。
特にひどかったのは、投稿者間の足の引っ張り合いとも言えるような、ギスギスした“拝点主義”が透けて見えてくる不毛な主張である。
主張している本人達は“正義”の名の下に糾弾していると思うのだが、傍目から見れば単なる投稿者間での“追い落とし”にしか見えない。
この大会は元来絶対的なジャッジメントがないわけであり、いずれは“衆愚政治”とも呼べる混乱が生じるだろうとは思っていたが、やはりという感じである。
以前このブログのエントリーでこき下ろすだけこき下ろしたのでこれ以上は言及しないが、この事態は大会のシステムの特殊性故に過渡的に起こるべくして起こったものであると考えている。
しかし、怪談、特に実話と呼ばれるジャンルを愛でる者は大方馬鹿ではあるが、決して根っからの悪人はいないと信じている(我々以上に“因果応報”という言葉を身に染みて理解している人種は少ないだろう)。
それ故に、希望がある。
来年こそは実りある大会になって欲しいと思う。


…で、ここで「ではまた来年!」ということで終えることになるはずなのだが、残念ながら今回はここで終わらない。
来年または再来年のどちらかで、この講評作業をまるまる1回分休養させていただきたい。
理由はいくつかあるのだが、大まかに言うと“血肉を削る作業で困憊”と“安住の地は不必要”ということに尽きる。
4年連続コンプリート講評でさばいた作品数は1500作以上になるわけで、これだけのものを築き上げるためにはどうしても切り捨てなければならないものも多く出てくる。
そして意外かもしれないが、やはり厳しい講評を続けていると精神的にささくれ立ってしまうし、それに耐えるだけの精神力にも限界がある(本音を言えばマイナス点を付けるのにはためらいがあるし、出来れば付けたくないと常に思っている。しかしそれによって“不味い酒”を飲まされるのが嫌だから、厳しい目を維持し続けなければならないのである)。
4年やって来て本当に疲れたわけであり、そしてしばらく横になって眠らせてほしいとふと思ったのである。
要は、一読者としてワクワクしながら作品を読んでみたいと思った次第である。
そしてもう一つは、偉そうな言い方になるかもしれないが、私の存在自体がこの大会の発展の妨げになっているのではないかという思いに駆られだしている。
“書き手自身が動かされるほどの講評内容を書く”ことが目標であるが、その強い想いが権威とくっついてしまうことを非常に懼れるし、そういう硬直した状態に自分自身がはまりこんで分不相応な錯覚に陥ることを果てしなく恥じる。
ぶっちゃけて言うと「この人がこう言ったから間違いない」などと言われ出したら、特にこの大会では“衆愚政治”の火種になってしまう危険性があると感じている。
自信過剰だという声もあるかもしれないが、4年連続ベストの事実は動かないし、変に権威付けられても嫌なのでちょっと身を隠しておきたいということである。
ただしこの大会を見限るとか卒業・引退という意味は全くない。
少し疲れたから休ませてもらうだけだ(まあ、そのまま目を覚ますことなく…という事態はゼロとは言わないが)。


来年の2月、もし10日経っても私のエントリーがなければ、休養に入ったと思っていただければということで…
しかし、影ながら応援し続けますから!