久しぶりに書く

かなり長い間ブログを更新していなかったのだが、あるタイミングを待っていたためである。
もう決して筆を執るまいと誓っていた“創作”の封印を解いた。約20年ぶり。そして【ビーケーワン怪談大賞】に投稿した。
別に自分の活動の幅を広げようとか、これを機に書き手の側にシフトしようとか、そういう野心はない。結果を言えば、ベスト50にも入らなかったし、レビュアーとして客観的に見ても、全然つまらない作品であると思いつつ投稿したような次第である。それに最初からこの1回だけの参加と決めている。自分の領分は理解しているつもりである。
言い訳すると、20年のブランクは、自分自身にとって凄い陥穽であった。同じ書く作業でも、書評のような達意の文を書くことと創作で言葉を編むのとでは、頭の動かし方が全く違った。同じ球技でもゴルフとラグビーぐらいの差だと感じた。実は去年の秋には3作書ききっていた。大昔に書いた創作作品のモチーフをそのまま使っただけだから、すごくサラサラと書けた。しかしサラサラとしか書けなかった。自分の思い通りに言葉を紡ぐことが出来ない。描写が描写でしか見えないし、そこから漂うアトモスに合った言葉で表現出来ない。やっぱり日頃から意識して書く修練を積んでいないと、そう易々と書けるものではない。改めて、あらゆる怪談の書き手に再リスペクトする。中には「こんな程度のものしか作れない奴が、偉そうに講評してたのかよ!」とか突っ込まれて怒られそうな気もするが、いかんせん今の自分の創作能力はこの程度が限界である。
でも、こんなへっぽこな状況であるのを理解しながら、祭りの輪に入り込んだのには大きな理由がある。
去年の夏、てのひら怪談オフ会に顔を出させていただいた。錚々たるメンバーである。その輪の中にちょこんとおチビちゃんがいた。これが大会の最年少投稿者だった。居並ぶ大物と交じって立っている表情は、まさに一投稿者として誇らしげと言うしかなかった。それを見て取った瞬間に、グラリと来た。
さらにその後、平山氏が大会に投稿していたことをカミングアウトした時。言いたくて言いたくてたまらなかったとしか思えない弾けた笑顔を見て、グラグラから一気に陥落。せっせと原稿用紙に向かって書き散らしていた記憶が甦っていた。20年の封印がいとも容易く打ち破られるだけ、二人の魔力が強烈だったのである。
そして、オフ会で色々とお話しさせていただいた方々にも感謝。
これが、1年がかりの返礼の全てです。