【０】私、悪くない。

“一発芸”的な小ネタとしては、それなりに展開がしっかりとしていて、何が起こったのかという事実についてはよく分かる内容であったと思う。
だが、どうして起こったのかという部分について考え出すと、非常に曖昧なところがかなりあるということにも気付かされる。
特におっさんの声の出所については、果たしてそれが布団そのものだったのか、あるいは布団にもぐり込んでいたあやかしだったのか、このあたりの判断をするために必要な描写が少ない。
体験者が怪異の直後に布団を部屋の隅に追いやっているという記述から、布団から声が聞こえてきたものと推測するのであるが、もしこれが本当であれば、怪異としての希少性があるにもかかわらず書き落としてしまっているという印象の方が強くなる。
もちろんストーリーとすれば、このあやかしの微妙なポジションが明確でなくても成立する話なのであるが、そこに怪異の希少さなり特殊性なりがあると判断した場合は、やはりそこの部分にも焦点を当てて不思議ぶりをアピールする方が作品としての価値が上がるのではないかという意見である。
もし布団そのものが怪異の元凶であるという感じにはっきりと見せることが出来たならば、もしかすると『鳥取の蒲団』以来の布団の怪異になっていたかもしれない（少なくとも個人的な記憶では、そういうことになる）。
現状のトータルとしては可もなく不可もなくというところなのであるが、そのような付加価値があれば評価にも影響が出るのではないかと思う。