【−１】妖怪？ＵＭＡ？

まずタイトルで大きく損をしていると言える。
タイトルを読めばどういうタイプの怪異が登場するのかあらかじめ読み手に種明かしをしているようなものであり、そうやって読み手が身構えているところへ“ムカデ”と来ても、それがたとえ“人面ムカデ”であっても、衝撃度はかなり抑えられてしまっていると言える。
こういうとんでもないものを目撃するという怪異譚の場合、書き手とすれば極力その正体がばれないように、最後の最後までどのような種類の怪異であるかということすら隠し通すことが必須であるにもかかわらず、逆に嫌でも読み手に判るように最初にばらしてしまっているのは非常にいただけないことである。
はっきり言えば、書き手自身がこの怪異の本質を掴み損なっていると指弾されても致し方ないレベルである。
もし仮に書き手が、あやかしの目撃でドタバタする体験者の慌てぶりを書きたかったのだとしても、それに見合うだけの体験者のキャラクターが確立されておらず、情報レベルとしてはやはり単なる“目撃談”の域を超えるものではなかったという印象である。
あやかしの希少性はかなりのものであると思うのだが、その部分の特化された内容になり切れておらず、むしろ体験者の方に無理に焦点を当てて（要するに体験者の行動ばかりが目立ってしまっている）失敗しているのではないかという気にさせられた次第である。
タイトルを変え、純粋な目撃譚として仕上げていたならば間違いなくプラス評価としていたと思うが、押し出す場所を明らかに誤っているという印象が強いので、厳しいがマイナス評価とさせていただいた。