【−4】デジカメ

読んだ瞬間に思い出したのが“シミュラクラ現象”。
いわゆる“点が3つあると顔に見える”という、心霊写真の真贋の判定にも出てくる“錯覚”現象である。
各社のデジタルカメラの“顔認識機能”の原理を確認すると、やはり目鼻口の3つのパーツで顔を認識することが基本であるらしい(一部輪郭が加味されているものもあるとのこと)。
つまり人間の顔だから認識しているのではなく、3つの点が人間の目鼻口のようなバランスで存在すると機械が判定すれば、そこに焦点が当たるような仕組みということである。
この原理でいけば、この作品の書かれた内容では全く持って怪異であるという判断は出来ない。
まず壁そのものの材質や仕様の情報が全く書かれておらず、特に凹凸のある壁であれば簡単に“シミュラクラ現象”は起こるはずであるし、デジカメが顔認識しても当然怪異ではなく、単なる機械の誤認識にすぎないのである。
この反証一つで、この作品にある怪異の内容は疑念以外の何ものでもなくなってしまう。
結局、書かれてある内容だけで怪異が起こったという確証が得られなければ、ただの与太話になってしまうのが“実話怪談”の宿命である。
この作品の場合、その部分で欠陥が存在するために大きく減点とさせていただいた。
もし仮にその壁を撮った写真が掲載され、そこに明らかに“人の顔”と思しきものが写っていれば話は変わるのであるが、書かれてある内容では、おそらく撮った画像には顔と認識できるようなものは写っていなかった、というよりもそもそも顔認識があったことを確かめただけで撮ってもいないのではないかという気すらする次第である(確証がないので評価の対象とはしないが)。