【0】応援

怪異についての解釈が非常に難しいと言わざるを得ない内容である。
要するに、体験者と従兄弟の複雑な事情があったからこそ怪異と遭遇することになったのは事実ではあるが、果たしてそれと怪異そのものが関係しているのかと問われると、かなり微妙な線上にあるとしか言いようがないわけである。
それ故に、“応援”しているというニュアンスが本当に正しいのかという疑問がつきまとった。
もしかすると“応援”とは、従兄弟との関係修復を切に願う体験者の主観の産物であって、実際にはもっと別の意味があったのではないかという疑念である。
しかし逆に言えば、この“応援”という解釈が誤りであると判定するだけの根拠もないのである。
最終的な個人的見解としては、この作品の場合“あったること”だけの記録ではどうしても収まりがつかない、しかしながらここに書かれた解釈が唯一絶対のものでもない、結局この作品における展開は可もなく不可もなくということで評価するしかないと判断した。
また冒頭にある“恐ろしい体験”という予告についても、第三者から見れば何とも間の抜けたシチュエーションを逆手に取ったレトリックではないかという判断をして、可とさせていただいた(最終行でまた“恐ろしい”を連呼する体験者という構図も、ある種の“笑い”と取った判断基準である)。
正直に言うと、シリアスなのかお笑いなのかその路線すらいまだに判断尽きかねる、まさに掴み所のない怪作(またそれが故意なのか偶然なのかすら分からないから、講評者泣かせの一作であるとも言える)。
客観的判断としては、面白味もあるが弱点もあるということで、水準並みということで。