【0】ポチのアルバム

死の知らせと予知夢とが同時に起こったという怪異であり、評価とすれば、どれだけの“精度”で確認できたかということに尽きると思う。
死の知らせとしては、夢の中であっても実際に自分の飼い犬であると認識が出来ており、またその夢を見た時が犬が死んだのとほぼ同じ時間帯と推測可能であるので、少なくとも“虫の知らせ”のようなものがあったことは認められる。
ただし、あくまで“夢”を介してということになるので、それだけで超常現象というレベルでの事象とまで言いきれるだけの説得力は弱いという見解である。
また体験者本人が存在を覚えていなかったアルバムを夢の中で確認したことについても、不思議ではあるが、深層心理の面で説明が付く次元でもあるということで、これも絶対的な怪異とは認めがたいという印象である。
そして肝心の予知夢の部分であるが、結論から言うと、最後の写真以外には具体的な光景が書かれていないために全く問題にもならず、そして最後の写真についての判断は非常に曖昧であると言わざるを得ない。
写真の状況から、予知の内容は“体験者が結婚して子供を授かる”というものであることは判るのだが、果たしてその内容を“予知”と断言して良いのかには疑問がつきまとう。
つまり、体験者の年齢的なものを考慮すると、この内容は“予知”でなくとも一般論的な予測でもかなりの高確率で起こりうると考えられるわけである。
しかも最後の写真の主の顔が認識できない状態であり、これでは具体的に“誰と結婚するか”という決定的な予知がなされていないのと同じと判断しても構わないだろう。
心情的には飼い犬がもたらした不思議な現象と捉えてもよいと感じるのであるが、客観的な怪異の記録としては決定打に欠けるというところで落ち着いてしまうと思う。
ある意味叙情的と言ってもおかしくないウエットな雰囲気を醸しだして読ませる作品に仕上がっているので、決してマイナス評価にはすることは出来ないという意見であるが、怪異の内容が弱いという判断をしたためトータルでの評価は可もなく不可もなくというところとさせていただいた。
正直な感想としては、体験者自身がまだ思い出していない、重要なパーツが現れていないような気がしてならないのであるが。