【+2】最後の封印

大ネタになり損なったという感が非常に強い作品である。
怪異の内容については申し分なく、とりわけ興味を覚えたのは、間違って本物のお札を剥がしたために封印が解かれてあやかしが現れたという部分。
まさに小説や映画を彷彿とさせる展開であり、ここらあたりから俄然読み手を作中に引きずり込む勢いが増していったように感じた。
特に肝試しの夜の出来事については、書き手の筆も乗っており、迫力ある展開になっていると言える。
ところが、学校が始まってからの展開はポンポンと事実関係だけが説明されているだけで、あれだけ迫真の勢いで書かれた前半部とうってかわって、拍子抜けの連続であった。
前半部での話者の言動から推測するに、失踪したり豹変したりしたサークル仲間に対するやりきれない心情がもっと前面に出てこなくては淡泊としか言いようがなく、書き手が違うのかと思うほど劣化してしまったという印象になってしまった(まさか前半で書き疲れてしまったということはあるまい)。
特に豹変してしまった女性に対しての接し方が、前半は勇敢にも救出しようと戦っていたにもかかわらず、それが後半になると、噂を聞くだけ、言い寄られた時ですら複雑な感情は出ずじまい、さらには病床の場面や死去の際も何か中途半端で駆け足な筆運びで終わってしまっている(少なくとも、話者は彼女の豹変の原因が何であるか見当をつけていると思うし、また自分自身がそれを分かっていながらどうすることも出来ないという自責の念に駆られているはずである。そのような感情すらほとんど表面に現れてこないのだから、やはりがっかりとしか言いようがない)。
はっきり言ってしまえば、あれだけ前半で活写できていたものが、後半で完全に失速した点は、書き手の怠慢と批判されてもやむを得ないだろう。
最後の病床の場面で彼女が発した「だったらどうした」というセリフが完全に浮いてしまうようでは、勿体なさ過ぎる。
後半も前半同様、話者の感情的な部分を多彩に織り交ぜながら、最後の顛末まで書ききったとしたならば、おそらく相当高い評点を付けていただろうし、大ネタとして記憶される作品ではなかったかと思う。
とにかく「惜しい」の一言である。