【−3】どうでしょう

厳しい言い方になるが、書き手の目論見がことごとく裏目に出てしまったと言わざるを得ない。
怪異についてであるが、詳細を書けば書くほどあやかしがどのような状態であるのかが分からなくなってくる。
突き出た足を“シンクロナイズドスイミング”にたとえるのはなかなか絶妙なのだが、その足が自分に向かって倒れてきたはずなのに、なぜか“添い寝”という言葉を付け足して、結局体験者と足との位置関係が不明になってしまっている(自分に向かって倒れてきたら“垂直”になっているように思うのだが、それが“添い寝状態”ならばどうしても“平行”としか考えられなくなる)。
また襖の向こうに見えたあやかしの描写についても、一体首がないのか、顔が見えないのか、母親でないとどうして判ったのかなど、書けば書くほど内容が混乱してくる。
結局のところ、この不明朗な書き方のために、果たしてこれが本当にあったことなのか、あるいは“夢オチ”なのかの判断も非常に難しいというレベルになってしまったように感じる。
そして一番問題なのはオチの部分であり、“腹が据わる”という言葉の掛け合わせ以外に一体何の接点があるのかすら掴めなかった(あやかしである足などの質感が書かれていない以上、人形と繋げようとする流れに必然性はないと断言したい)。
個人的に言うと、完全に明後日の方向へ話がすっ飛んでいってしまったとしか言いようがないし、ギャグを飛ばした自分だけが笑い転げているというような印象さえある。
怪異の部分だけ取りだして書いていればまだ何らかの評価すべき点もあったかもしれないが、さすがにトンチンカンぶりがここまで突出しているのでは大きく減点せざるを得ないところである。