2010-04-29から1日間の記事一覧

【−1】眠れぬ理由

“病院の怪談”としてまだ生きている人間の幽体離脱がメインとなる怪異譚は、かなり珍しいという印象である。 しかも入院している体験者に対して特別な災いをもたらしているわけでもなく、その点でも非常に希少な怪異であるという印象である。 おそらく怪異を…

【−2】蹴ったもの

前半で、体験者の認知した感覚についてしっかりと書いているにもかかわらず、最後でその感覚を根本からひっくり返すような表記をしている点で、大きな違和感を覚えた。 実際に体験者はそのあやかしと思しき存在に触れているわけで、それが最も説得力のある怪…

【−4】誰もいらない

書き手が訴えたいこと、書きたいことの全容は、おそらく誰が見ても明瞭に解るぐらい明瞭であるし、その熱意と筆力にはある種の感銘を受けると言ってもいい。 しかし、その主張が“怪異”ではないところに、この作品の致命的欠陥がある。 青年の孤独死から始ま…

【−3】どうでしょう

厳しい言い方になるが、書き手の目論見がことごとく裏目に出てしまったと言わざるを得ない。 怪異についてであるが、詳細を書けば書くほどあやかしがどのような状態であるのかが分からなくなってくる。 突き出た足を“シンクロナイズドスイミング”にたとえる…

【+5】鬼を見た

怪異が起こった当時の雰囲気が文章の中で再現されていると感じるところであり、民俗学的な情報もかなり詰まっているとも思うほどのしっかりとした内容である。 そして何といっても怪異そのものの凄惨さ、さらにはその描写の緊迫感といい、まさに一級品の怪談…