来年の予測

まずは去年の予測の結果から…
◆怪談系は堅調→ いい意味ではずれた
◆予言系は確実に日常に浸透→ 大はずれ
◆「語り」はトレンドになれるかも→ なった!
◆妖怪とUMAは微妙→ ある意味正解
◆都市伝説はゴシップと陰謀の渦→ これも正解


では来年の予測を…
◆怪談系は地殻変動の年に
新耳袋』『「超」怖い話』という“実話怪談”が登場して20年、ようやく新しい地平線が見えたのが今年だった。一番のポイントは、文藝怪談系列の書き手できつい実話が書ける者が頭角を現してきたということ。つまり“記録”として怪異を書き留めていく方向性が強い実話怪談系列の書き手の独壇場だった場面に明確に新しい血が入ってくることで、スタイルの追求が本格的に始まったと見ている。今まではネタの強烈さ(恐怖感)を絶対的な基準として、文章スタイルはある程度フォーマット(先達の作り出したシンプルでリアルを形成する構成)に従って書いてきた傾向が、一気に“作家の個性”をも要求される状況になってきた。来年はおそらく、このリアリズムと芸術性とが化学反応を起こす可能性が出てきたように感じる。実話系とも文芸系ともつかない、両者の長所を押さえた書き手が登場するかもしれない。
ただしこれは喜ぶべき点であると同時に、実話と創作の垣根を低くする危険も孕んでいると感じるし、いわゆる“ガチ怖”や“大ネタ”といわれる恐怖一辺倒のネタの出現率も落ちるのではないかと思うところもある。それでも時代は既に蠢きだしていて、今秋の『震』などはその萌芽であると確信している。あとはこのレベルの作品が書ける書き手がどれだけ現れるかに掛かっているだろう。とにかくしっかりとした文章技術を持ち(完成された個性はまだ必要ないとは思う)、ある程度のネタを取材できる環境にある人物が出てくれば、一気にブレイクすることは間違いない。【超−1】でも【幽】でも良いので、そういう血の登場を待ちわびたい(【超−1】については来年も講評する予定でいるので、そういう人材を掘り当てられるよう鋭意努力していきたい)。当然既存の書き手の方々にも精進していただきたいわけで。


◆「語り」は強力なアイテムになる
技術的なことに疎いため、また“ラジオ形式で聞く”ということに抵抗(“ながら”で聞くことが非常に苦手)があるため、正直怪談語りをPCで聴くことはない。しかしその勢いの噂は耳に届いているし、それなりに人材も集まっているように聞く。元々怪談は“談”と付いているように、語りの要素が強いコンテンツであると思うし、馴染みやすい素材であると思う。だからこそ、昨今の傾向は良いことだと思っている。
しかしながら、こういう新しい試みには必ず問題点も潜んでいるわけで、例えば“語り”の著作権だったり、アーカイブの所属権だったり、当然“舌禍”は“筆禍”より起こりやすいはずである。こういう部分が整備されてきたら、ますます“語り”をPCで聴くという行為の機会は増えるだろう。おそらく来年もこれらの問題を徐々にクリアしながら、勢いをつけてくるのだろうと予測する。とにかく頑張ってほしいジャンルである(そのうち私もまず聴くことからチャレンジしたい。まあ、さすがに自分で語るということまでは考えていないが)。
また“語り”のライブや、オフ会形式の“百物語の会”のような催しも、今後増えていくと思う。


◆2012年問題はオカルトではなくなった
「地球が滅亡するのでは?」とか噂されていた2012年問題であるが、結局、マスコミもそういう煽りを殆どしなかったために完全に埋没。やはり1999年の騒動に懲りているのかもしれない。来年もおそらく論調が変わらない限り、あぶくのように途切れはしないが大きく取り上げられることもないだろう(下手をすると2012年問題はエコ問題にすり替えられるかもしれない。そのぐらいオカルトから遠く隔たった存在になってしまった)。
ただこの問題がきっかけで、やたら出てきたのはUFOの話題。個人的にはUFOはどうでもいいので、ここではあまり論及しないが、もしかすると来年ブームを迎える可能性はある。ウィキリークス絡みもあるので、要注意といったところか。


◆妖怪は煮詰まる
今年は『ゲゲゲ』で明け暮れ、御大が文化勲章を受賞された。さすがにここまでくると、行き着くところまで行き着いた感じである。危惧するところは、一般大衆化した文化は発展を阻害されるということ。とにかく御大が放つ光が強すぎて、周囲がかすんで見えなくなっている状態が続くのではないだろうか。その中で雌伏の時を過ごせるかどうか、ブームに寄っかからずに個性を出せる人材がどれだけいるのか。ポスト御大はまだ先の話かもしれないが、既に内部ではそれを考えて行動すべき時期に来ているようにも見える。とりあえず堅調だが、あまり画期的な動きはないと見ている。


◆UMAも都市伝説も決め手に欠ける
どちらも停滞気味。要するにネタが不足してきているように見える。都市伝説も守備範囲をむやみに広げることでしか維持のしようがないようであるし、UMAもパッとしない(先だっての“クニマス”再発見でかすかに盛り上がったみたいだが、結局乗り切れなかったみたいだし)。とにかくブームが起こせないと、この2つのカテゴリーはくすぶり続けるだけで、あまり期待は出来ないように思う。とにかく仕掛けが必要な年になるかもしれない。


◆パワースポットブームは継続
とにかく猫も杓子もパワースポットである。必死に癒されに行って何が楽しいのかよく分からないところもあるが、鰯の頭のようなものなのだろうと思う。このブームはスピリチュアルブームから連綿と続いているものであり、とにかく根強い人気があるので、そう簡単に廃れることはないだろう。またこのパワースポット巡礼を通して神社参拝などが流行ったりしているわけで、いい傾向と思う反面、ただの流行だから表層的な変化でしかないとも諦めているところもある。いずれにせよ、世の中が不安定である限り、この信仰は続くのだろうと予測。


というわけで、来年も「幽鬼の源」は続きます。