【0】オモリ

少々不謹慎な表現であるが、いわゆる“ご当地”怪談と言うべきものである。
明治時代、北海道の開発に政治犯などの囚人が駆り出され、その多くが寒さと飢餓のために死んでいった。
しかも死んだ後も埋葬されず、セメントや土砂の代わりに埋められたりした遺体が多数あるとされる(これにまつわる代表的スポットが【常紋トンネル】だったりする)。
これをふまえて読めば怪異の肝がどこにあるのか明瞭なのだが、この解説を最後にしてしまったために、怪異の現象と歴史的背景とがしっくりと噛み合わなくなったように感じた。
少々ネタバレ気味でもいいので、人骨の発見の方を先に出して、後から竈の怪異を語った方が感情に訴えるところが強くなったようにも思う。
怪異そのものについても、本質的な部分でかなりあやしいところがある。
「灰に水溜まり」という表記と「灰が湿った」では、印象が相当違う。
やはり「湿った」という程度であれば何らかの科学的説明がつく場合があるように思うし、インパクトの差は歴然としている。
この表記のずれは明らかに作者のミスであり、怪異の信憑性を損なうおそれが十分あるだろう。
話の持って行き方では歴史的な重みを持つ結構な作品になったかもしれないが、問題点が指摘できるので評価を下げさせていただいた。