【+2】つまみ食い

すれ違った人に霊体が張りつくようにくっついているのを目撃する話は、それこそありきたりの内容である。
だがこの作品では、霊の声と共にアイスクリームが消失するという奇怪な現象が起こっている。
この不思議な現象によって、格段に価値のある内容に仕上がっているだろう。
ただ、消えたアイスクリームの形状や、アイスの部分以外の手にした物まで消えたのかなど、もう少しディテールがあれば、尚のこと良かったと思う。
文章についても、きらめきを感じさせる言葉がところどころに散らばっているように思うし、展開も読みやすいという印象が強い。
しかし最後の部分だけはいただけない。
会話文で怪異の肝を説明しているのだが、ここだけは冗長さが目立つ。
特に“喋り言葉”で畳みかけるように状況説明や感想をごちゃ混ぜにして語らせているので、くどさを感じるし、話が整理できていないようにも見える。
やはり怪異の肝の部分は“語り”ではなく、地の文で書いた方がすっきりするだろう(作者に筆力があるのでまだ読めるが、表現力が弱ければもっと混乱した文になってしまう可能性もある)。
1文ずつ改行しても多分読みにくさを感じると思うので、正攻法に徹した方が得策だと思う。