【+1】虹色

非常に評点のつけにくい作品である。
普通の“1ページ怪談”と印象が違うのが、黒い虹の存在が個人的な一回性の強い体験ではなく、“村全体”の日常的体験として書かれている点である。
この特異性が作品全体の印象を微妙なものにさせていると思う。
黒い虹を“あったること”として受け入れてしまえば、それ以上の説明がないために、虹以上の謎の存在(住民全員が虹が黒く見える村)が大きくのしかかってくるのだが、それをコメントするだけの情報もなく、ただただ“あったること”として最後まで受け入れざるを得ない状況に追い込まれる。
結局のところ、多数の人間が普遍的に認識している怪異であるが故に検証可能であるという意識が生じるために、それが事実のみで投げっぱなしにされていることに違和感を感じるのだろうか。
凄い引っかかりを意図して書かれたのであれば、見事に読者を落とし込んだと言うべきだろうし、意図しないところの副産物であれば、厄介なものを出してきたと言うところである。
独白体で事実のみを述べさせる形式であったために、すごい思わせぶりな作品に仕上がったと言うべきだろう。
それが作者の意図とどう関係しているかは、わからないが。