【+1】百物語その後

怪異の肝が“夢”として語られる怪談話は、どうしても印象が良くない。
体験者の無意識が働くとか、現実の出来事と無理にこじつけようとか、そういう解釈で片付けることが可能だからである。
この作品の場合、まだこじつけめいた印象は薄いのだが、細かな部分を読むと不審感を与える記述がある。
奥さんの夢ではあやかしが一緒に「部屋に入ろうとした」とあるのだが、そのあやかしの侵入を防いだお札は「玄関にある」としている。
お札の力によって封じられたはずなのに、僅かではあるが距離的なずれが生じているのか、気にし始めるとかなり厳しい。
文章構成であるが、百物語に関する蘊蓄を挟むのは対初心者向けには良い試みだと思うが、ただ百科事典のような解説なので、このような物語形式の中に入れるには少々硬い印象を持った。
またその後の懇親会あたりの記述も怪異とはほとんど関係がないので省くべきだろう。
ところが、作法通りに百物語が行われたのか、その時に奥さんが夢に見たようなあやかしに関連した話が出たのか、そのような怪異の本質にまつわるエピソードがほとんど書かれていない。
上に挙げたようなエピソードが展開されていないために、夢オチ臭いという評を打ち消すまでに至らなかったと思う。