【+1】トライアングル

これだけ短い作品で、読者が混乱してしまう構成はさすがにいただけない。
4〜6行目の部分が、誰が誰に向かって喋っているのか非常に分かりづらいために、ここで完全に立ち止まってしまった(特に4行目の「きれいなお姉ちゃん…」のくだりはいまだに誰のセリフで何を意味するのかが把握出来ていない)。
むしろ声の主が女性であることだけ別の場所で出して、この部分を完全にカットしてしまった方が、明瞭に話の筋が解るように感じた。
ただしダイレクトな表記なしで怪異の背景を読者に解らせる力量を考えると、それなりの技量を持った作者であると推測できる。
掌編はどうしても小さな疵がことさらに大きくなるので、目立ってしまったというところだろう。
怪異そのものについては小粒ではあるが、非常に興味深い。
爺さんと間違えて婆さん(しかも明らかに“敵”だ)にキスしてしまう霊体はなかなかお茶目だし、しかもキスマークという物証を残すのだから、心霊現象としても意外と貴重な体験である。
もし長期間続いているのであれば、ある意味相当強烈な怪異であるかもしれない。
とりあえず、この作品については変化球の切れが良すぎて、狙ったコースにきまり損なったように感じる。