【0】線香の煙

小気味よいどんでん返しがあり、思わずニヤリとさせられた。
しかしそのネタに合った、ツボを押さえた書き方になっていないように感じる。
特にオチの1文はあまりにも素っ気なさ過ぎて、驚きではなく、冷静に納得してしまったというところである。
書きようによっては非常にインパクトが出る部分なのだが、そのような印象からはかなり距離のある雰囲気になってしまった。
別に内容に過不足がある訳ではないが、落ち着いた地の文で説明してしまったことに迫力不足の原因があるだろう(思うに、ショートレンジから一気にオチへ持ち込もうと考えて、一文で切り上げようという意図が働いたのではないだろうか。しかしインパクトを作るのであれば、短い会話のやりとりの方が一般的には効果的だと個人的には思うが)。
それ故、まだまだ“読ませる”文章にまでなっていないと思うし、これからそのような修練が必要だと感じる。
ただこの作品で言えば、ネタの小粒さに適した文章の長さであると思うし、全然的外れな書き方ではないと思う。
ちなみに写らなかった母親の安否であるが、インパクト勝負であれば写真に写っていない事実だけでとどめて、書かない方が正解ではないだろうか。
逆に恐怖感を煽るというのであれば、母親に不幸があったとすれば書いた方が良いように思う(実に罰当たりなことになるが、得てして怪談とはそのような残酷な趣味に彩られるものである)。
いずれにせよ、これは作者の意図次第であるだろう。