【+2】関羽

神様が視線を注ぐという話は、既に指摘がある通り、昨年の『不動心』と同じパターンである。
しかし内容の点で、どうしても『不動心』よりも落ちるという印象である。
一言でいえば、神様として関羽の様子があまりにも神様然としているからである。
“神様系”の話の場合、強烈な神威を見せる(ご利益でも祟りでも可)系統と、神様らしからぬリアクションをやらかしてしまう系統が、傑作の部類として評価されていると思う。
この作品の場合、関帝は強烈な結果を出す訳でもなく、かといって羽目を外すようなこともしていない。
希少な体験であることには変わりないのであるが、“神様系”怪談としては「さもありなん」というところで終わってしまっている感が強いと言えるだろう。
どうしてもネタの内容なので不満を言っても仕方がないのだが、傑作と呼べる内容ではなかったということである。
構成であるが、最初に関帝廟の参拝方法を書いたのは、可もなく不可もなくというところだろう。
決して冗長であるとか無駄というレベルではないように思う。
あまり馴染みのない神様ということなので、個人的には書かれていた方が良いという意見である。
この作品で一番小気味よいと思ったのは、体験者が怪異に気付く瞬間の表記であろう。
この部分があっさりとしながらも、非常にインパクトのある書きぶりであったことが、きれいに話がまとまった原因のように思う。
怪異のネタに適したいい書きぶりであり、小品としてはなかなかの出来だろう。