【+2】乳母車

畳みかけるような恐怖の連続で、読みやすい書きぶりと相まって、グイグイと引き込まれるようにして読んでいくことができた。
だが、体験者以外にもあやかしである女を目撃した複数の証言があるという最後のくだりで、一気に面白味が薄れてしまった。
この作品の一番の魅力は何と言っても“不条理”であり、季節に合わない服装をした女、乳母車に入っていた白人の生首といったものが訳も解らないまま次々と登場することに怪異の肝がある。
ところが複数証言によって、この女性の存在が“生身の人間”であり、いわゆる霊的怪異とは違う印象をもたらしてしまった。
また霊的な存在と仮定しても、そこに出現する“因果”というものを感じてしまい、不条理と違った雰囲気が生じてしまったと言える。
ただ意表を衝く怪異であることには変わりなく、特に生首二つは希少性の高いものであるだろう。
全体的な雰囲気と併せて、好評価までは至らずとも、それなりに評価はできる作品という印象である。