【+1】カマキリ

偶然の一致と思える怪事に出くわすと、人間はそれらを結びつける原因をどうしても探し出してしまう。
その心理は別に悪いとは言わないし、それが誰もが納得しうるだけの原因であれば、それはそれで人智を超えた存在のなせる業として怪異譚となる条件を持てるだろう。
だが、この作品ではとある神社の狛犬に罰当たりなことをした直後に、親族が左手の甲を連続して怪我をする訳であるが、どうしても狛犬とカマキリとの関連性が希薄であり、何かこじつけめいた印象の方を強く感じる。
親族が三人立て続けて左手の甲を切られたという事実だけで十分“偶然の一致”としての怪異が伝えられているにもかかわらず、そこにカマキリや狛犬の存在を入れてしまったために、却って信憑性を疑わせるような結果になってしまった。
起こった現象自体が誰もが肯定せざるを得ない内容であるだけに、それを前面に押し出すだけで十分読者の納得を得ることができたに違いない。
そこに少々無理のある因果の原因を求めてしまったために、そちらの胡散臭さでマイナス評価となってしまった(三人目の被害者も“カマキリ”を目撃していたら展開は大きく変わっていたかもしれないが)。
“あったること”としての怪我だけを書いた後に、「そういえば…」という感じで最後にさりげなく思い当たる節を提示した方が面白かったかもしれない。