【＋３】ワンボックスカーにて

超−１

適度な長さと読みやすさによって、かなり読み応えのある作品に仕上がっている。
怪異としてはそれほど強烈なものではないが、オーソドックスな怪異を臨場感溢れる筆さばきで書ききっているという印象である。
だがオーソドックスといえども一昔前のような古い感覚の作品ではなく、例えば因果を含ませるような記述が全くなく“投げっぱなし”怪談に徹しているなど、時代の傾向を汲んだ内容になっている。
ある意味、最近の正統派怪談のお手本と言えるだろう。
前置きはやや長いように思えるが、車のある場所の説明、車内にいる体験者についての説明が正確に書かれており、怪異と無関係な内容ばかりではないので、十分許容範囲である。
特別な比率がある訳ではないが、怪異の肝の部分とその他の部分とのバランスがとてもしっくりくる。
文章はもとより、構成においてもかなり熟練しているような印象を受けた。
ただどうしても本質である怪異に希少性が感じられないのが難点であり、これさえクリアすればかなりの作品になったのではないだろうか。
新奇さはないが、非常に手堅い物作りのできる作者という印象である。