No.12

2月に4作同時応募で完了してしまっている。
この作者の最大の特色は、体験者の主観目線が強烈ということに尽きる。
『オレンジ色のトレーナー』と『工場の女の子』は作者自身の体験ということで主観目線の説明がつくのであるが、意外だったのが残り2作品である。
怪異のレベルにそぐわないほど連綿と書かれた体験者の主観ぶりであるが、なぜここまで書かなければならなかったのかという疑問ばかりが湧いてくる。
やはり作者自身が“見える”ようになったことが怪異を書くきっかけとなっているために、どうしても体験者寄りにストーリーが流れていくようになってしまうのであろうか。
あるいは何か実験的な意図があったのだろうか。
ただ言えることは、この種のレトリックは怪談読者の支持を得るにまで至っていないということである。