No.24

結論から言ってしまうと、作品の完成度にムラがありすぎで、実力的によく解らない作者である。
文章技術に関しては、ある程度の長さの作品を書いてもストーリーとしての破綻が見られず、かなり書き慣れているという印象がある。
ところが、怪談話としての展開に焦点を当てると、どうも書き方に怪しさが残る。
例えば『覗き、笑う』『橋本先生奇譚』『礼儀知らず』のように怪異の本質とは全く関係のない雰囲気作りが顕著であり、かなりのレベルのネタであっても何かスケールが矮小化されているという印象が拭えない(逆にネタ的に弱いはずの『おかしい部屋』はバランスが悪いぐらい大仰に話を引っ張ってみたりする)。
また『田んぼにて』『記念』のように、都市伝説化されているような内容がメインとなる作品を平気で出してくる。
とにかく怪談のヘビーユーザーから見ると、非常にちぐはぐな問題点ばかりが目立つのである。
それでいて展開については非常に怪談巧者であるという認識がある。
特に謎めいた出来事を最初に出し、それの真相が徐々に表面に浮かび上がってくるような展開は、一朝一夕では作れない能力の裏打ちがあると思う。
相手を論理的に説得する能力には長けているのだが、論点がずれてしまっているというところだろうか。
3月末から4月中旬までの9作だけでは、まだ真価を見極めるまでは至らないということにしておきたい。