No.25

2月から4月上旬に掛けて30作の応募。
大問題作連発の初期から最終公開の『がんほどき』まで、よくぞここまでスキルアップしたと声を大にして言いたい。
2月中旬に立て続けに凡作が登場した時には間違いなく同一作者の暴走だと推測していたが、そこからの復活が公開日時を追う形で明瞭に見て取れるのは一種のサプライズであるだろう。
この作者の場合、怪談初心者というよりも、多分ネット掲示板などで時折体験談を投稿していた人種であると想像している。
それ故に初期作品は投稿型作品の特徴である“要約文”タイプの書き方であり、それが舌足らずで且つ既存の有名ネタとかぶってしまったために袋叩きにあったわけである。
そして第一の変化と言える饒舌体へ移行(『モッテ』『カード占い』『見知らぬ連れ』あたり:3月上旬)、ここがターニングポイントになったと思われる。
さらにストーリー性を持って怪異を抽出する様式を体得(『運命の赤い糸』『タマゴ』『くの字』あたり:3月中旬)、この後からはそこそこ評価される作品が出せるようになったと思う。
どこでどのようにして進化を遂げるきっかけを思いついたのか、それは作者本人に尋ねてみなければ分からないが、ある意味最も効率的な進化がなされたと言えるだろう。
ただ惜しむらくは『がんほどき』以降、沈黙を守ってしまった点である。
多くの講評陣から高い評価を受けて満足してしまったということではないだろうと思いたいところである。
(書き続けなければ進化しないということをこの作者が身を以て体験しているから大丈夫だと思うが)