No.28

大会期間中ほぼ満遍なく40作品を応募している。
数字だけを見ると、ほとんどの作品があまり高く点数を伸ばしているというように見えない。
むしろ、大量投稿にもかかわらず総合計も伸び悩んでいるという印象である。
この作者の問題点は文章に尽きると思う。
各作品の講評を読み返すと、かなりの作品で「文章が硬い」という発言を繰り返していた。
やはり一番感じるのは、説明調の文章が多く、描写に関しても動作ではなく状況を表すものが多いということである。
漫画で喩えるならば、ストーリーの展開が絵ではなく言葉で済ましている、また絵が場景だけを表しているだけで登場人物を活写し切れていないという、そのようなレベルのものであるということである。
どうしても“読み物”としての硬さが悪い影響を与えていると言うべきだろう。
そしてこれに類する傾向として、この作者の作品の締めくくりには、体験者や作者本人のコメントと言うべき一文が添えられている。
またこれが説明調の雰囲気を助長しているように思うし、弱いネタの場合には作者の言い訳にも映ってしまう。
(読者に訴えかけるという一つのエンディング方法であるが、説明調の文章の最後にあると、どうしても“上から目線”で書いている印象が強くなってしまう)
この作者の最高得点作品が、怪異の時間的経過を記録したルポタージュ風の『大岩騒動記』となったのは偶然の産物ではないだろう。
人物や現象の動きに関する描写文を使いこなし、動きのあるストーリーを盛り上げることが、今後の課題になると思う。