No.34

2月と4月に計6作品を応募している。
自分の書いた講評を読めば読むほど、この作者の実像は大きくぶれてくる。
というより作者同定後に再読したが、それでもこの作者に関しては見えてくるものがない。
怪談巧者かと思うほど上手く怪異を処理している『ワンボックスカーにて』があるかと思えば、怪異の本質が解っているのかと思うほど凡庸な『トイレっち』『rip』もある。
文章技術にしても、『そら』のようにもたつきが気になるものもあれば、『ウォータースライダー』のように非常に滑らかなものもある。
“ムラ”という言葉だけでは片付けられないものがあるような気がしてならないのである。
ただ結論を言えば、こういうタイプの作者の場合、概して悪い方の評価が本来の実力であることの方が多い。
要するに評価の高い作品は“出来過ぎ”とみなした方が間違いが少なく、本気で上達したいという作者に対してそのように示した方がプラスに作用することが多い。
怪異に関する分析がまだ弱い(表記不足なのか知識不足なのかは不明)と見受けるので、高評価を受けた他の作者の怪談話を読むことで、怪異をどのように表現すればベストとなるのかを汲み取って欲しいと思う。
とはいうものの、結局最後までつかみ所のない作者という印象であった。