No.43

3月末を中心に4作の応募。
正直なところを言うと、正統な怪談語りとは違う雰囲気を持っているという感想である。
例えば、『フネさん』でのアニメキャラクター連呼、『猫が見えるもの』での読みづらいまでの忠実な口調再現あたりは、センスの上で何かひとつ違うものを感じざるを得ない。
また『一家団欒』での家族全員の恐怖感の不自然なずれも、読者としてはピンとくるものではなかったと思う。
要するに、怪異をどのように効果的に表すかという部分においての技巧が、良い意味でのお決まりのスタイルから逸脱しているのである。
もっとダイレクトに言えば、この作者の書きようでは伝わる恐怖感も伝わってこないのである。
『残す』でも、肝とすべきあやかしの残した跡に関する記述があまりにもあっさりしすぎていた。
ただこの作品の場合は、力点を置くことのできるもう一つの場所にきちんとウエイトが置かれていたので、さほど奇異に感じることがなかっただけで、作者同定の結果を見ると偶然ずれたポイントでヒットしただけという印象が強い。
怪異の本質を見極めるということは、起こった現象において何がもっとも恐怖や不思議をもたらすものなのかを嗅ぎ当てるのと同時に、その怪異を正しく読者に提示できるレトリックを見つけて書くことでもある。
やはりそれができていないようでは、怪談を書く者としてまだ未熟であると指摘されても致し方ないだろう。