No.45

全期間を通してぽつぽつと5作品を応募。
この作者のもっとも苦労した跡が伺えるのは、最後の締めの一文である。
ただ苦労した割にはあまりうまく成功したようには思えない(そうだから目立つ訳なのだが)。
『夜行』では肝からかなり乖離したエピソードで、『すいませ〜ん』『盗み見』では体験者のとんでもないコメントで、結局作品そのものの味わいをぶち壊してしまっている。
だがこれは作者の文章技術が低いからではなく、むしろ一定水準の力があるために生じたものだと推測する。
文章技術があるためにどうしても余韻のある作品に仕上げようと、最後に気の利いた文挿入を試みているのである。
余韻を残すためにわざとずれたところからのアプローチを図っているのであるが、それが本当にずれてしまっているので変な印象を受けることになる。
この作者の文章の実力は『見えるかい?』で十分発揮できている。
この作品の締めの一文を見れば、見事にはまるとここまで引っ張れるかというほどの余韻が出来るのだが、やはりハイリスクである。
あまり肩肘張らずにエンディングを迎えた方が、この作者の場合は活きるように思う。
一度“投げっぱなし”怪談を書いてみてはどうかとも思う。
その前にネタの引き当てに精進すべきかもしれないが。