No.48

2月下旬から最終までぽつりぽつりと9作の応募。
この作者の特徴は、ことさらに恐怖を強調するわけでもなく、非常にあっさりとした雰囲気のある文章になっている点であろう。
ただし作品を読むと、これが悪い方に作用していると言える。
一番典型的な作品が『用足し』。
ネタとしては相当恐怖感を出すことが出来る作品にもかかわらず、怪異に対する家人の素っ気ない返事で全てが台無しになってしまっている。
ほかの作品についても大なり小なり同じ傾向にあると言えるだろう。
むしろ意地の悪い見方をすると、この作者は怪談の恐怖感をわざと消し飛ばそうとしているのではないかと思ってしまうほどである。
唯一例外なのが『水平に顔半分だけ』であるが、これも読者が勝手に強烈な“投げっぱなし”怪談であると判断しただけであって、本来は他作品と同じ傾向を持つ、恐怖感を押しつぶした雰囲気のものだったのではないかと思ったりする。
いずれにせよ、作者なりの怪談のスタイルがあると感じるのであるが、それが一般的に受容できるものではないということで落ち着くのではないだろうか。
ネタの小粒さによる問題ではなく、文章による恐怖感や不思議感の創出が欠如しているのは、やはり怪談作者としては大きな欠点であると指摘できるだろう。