No.50

2月から3月にかけて8作品の応募である。
特にエントリー1番など、初期に応募が集中している。
この作者の場合、一番まずいパターンが体験者のサイドストーリー的な部分にまで踏み込んでしまった内容の作品であると言える。
『ありがとう』『老けた』『質問』『再会』『ついてない一日』はまさにこのパターンのためにマイナス評価を食らってしまったといっても過言ではない。
こういうタイプの作品が怪談にそぐわないという意味ではなく、感情移入をさせすぎたために本来メインとなるべき怪異が浮き上がってこなかったのである。
体験者の感情を際だたせることは実話怪談の場合に必要なのかどうかはかなり高度な問題であると思う。
絶対的な答えがあるわけではないが、どちらかというとハイリスクの部類にはいるということになるだろう。
この作者の場合、結局のところその部分にこだわりすぎて却って怪談の本質を見失ってしまったという印象である。
やはり怪談話は“あったること”を書ききることを優先させるべきであり、体験者の心理描写はそれに付随して必要であれば書くということが基本であると思う。
何か作者独自のカラーを出そうとして無理をしすぎたために、応募が最後まで続かなかったのかもしれない。