【−2】カーテン

精読するまでもなく、非常に粗雑で乱暴な書き方になっており、整合性の面では評価できない作品であると思う。
最後に登場する話者の解釈が全てを象徴しているが、とにかくマンションの前にある“表に出てこない墓地”が怪しいという思い込みから逆算して、怪異が書かれているようにしか見えないのである。
しかしながら、マンション内の闇に関する怪異と、昼間でも寺の前のカーテンが閉じられている事実を結びつける何かが全く欠落しており(これが似たような怪異を想起させるものであればまだ納得がいくが)、さらにこれらの全ての原因が寺にあるという結論付け(しかも最初に挙げた2つの怪異と全く縁もない“見える”という推断である)も強引と言わざるを得ないだろう。
まだ事実だけを並べる手法であれば“思わせぶり”ということで納得いくのであるが、話者自身が因果関係を堂々と断言しているため、完全に勇み足の状態に陥ってしまっている。
さすがにこのような書き方では、これらの怪異が実際に関連性があったとしても、読者の反発を買うのは必至である。
さらに問題は、メインの怪異となる“マンションの闇”に関する記述が、説明不足で理解が難しい状況になっている。
まず、闇そのものがマンションの階段部分全体を覆っているのか、あるいは一部分だけしかないのかすら、これだけの記述の中で把握できない。
特に蛍光灯や明かり取りの窓の存在があるにも拘わらず闇があるという記述については、整合性の面から考えると、何らかの注釈なりがないと単なる矛盾や錯覚のたぐいにしか見えない。
また女性の容貌についてはっきり捉えているにも拘わらず、伝票が懐中電灯で照らさないと見えないぐらい暗いという部分も、正直どのような状態になっているのか想像できなかった(付け加えると、懐中電灯の登場があまりに唐突で用意周到すぎて、不審に思わざるを得なかった)。
結局闇の大きさがわからないまま読んでしまっているので、読者によっては激しく矛盾を感じたり、御都合主義的にしか映らないと言えるだろう。
怪異自体については非常に興味深いものを感じているし(もし仮に“何らかの意志を持って部分的に存在する闇”というものであれば、かなり強烈な怪異であると思う)、寺の存在も気になるところである。
だがそれらを生かし切ることが出来ず、やみくもに“初めに結論ありき”のような方向性で書いてしまっているため、作品としてかなり破綻してしまっているという意見である。
本来ならばもっと点数が低くなってもやむを得ないところであるが、言い尽くせぬ怪異の存在が気になるので。