【0】テレビ

怪異としては非常に面白いものを感じさせてくれる内容である。
また作者自身も、怪異を客観的に成立させるための工夫として、単なる見間違いや寝ぼけていた錯覚ではないことを強調するために、ブラウン管に映った自分の姿について詳細を書いてみたりしている。
怪異に対してそれなりに考えた配慮がなされているという印象が強いと言えるだろう。
しかし、その丁寧な書きぶりが逆効果になってしまった部分もある。
怪異に気付く瞬間の部分であるが、そこで作者が非常に細かく状況を説明してしまったために、何か非常に冷静すぎて違和感を覚えてしまった。
異常な事態に作者が恐怖を感じているのではなく、戸惑っているという感触はあるのだが、きちんと整頓して書いてしまっているために、読者に対して良い意味での引っ掛かりがほとんど消えてしまっているように感じるのである。
もっと具体的に言えば、臨場感がないのである。
そして怪談話の一つの見せ場である衝撃的な印象がない、淡々とした平板的な展開に陥ってしまったように思う。
体験者が不思議に感じた経緯を書くよりも、“あったること”だけをコンパクトにまとめた方が“投げっぱなし怪談”の味わいで面白いものになったのではないだろうか。