【+1】愛撫

怪異のレベルとしては非常に些細で且つ平凡なものであるが、その怪異に合った適切な書き方で表記しているので、なかなか好印象な作品である。
また状況に関する情報がコンパクトであり、理想的な“1ページ怪談”であるとも言えるだろう。
特に印象に残ったのは最後の1行であり、妙に生々しいリアルな体験者の反応で、余韻を伴ったインパクトのある文であると思う。
しかしタイトルに難があり、怪異の内容とややずれているのではないかと印象である。
文中では触れられていないのであるが、もしかすると体験者は吹きかけられた息遣いから、息の主が性的な目的をもって近寄ったという直感的判断を下したようにも受け取れる。
それでもそのような推測が成り立つとしても“愛撫”という言葉はやはり微妙な違和感を残ると思うし、そういう体験者の感想についての情報は、もし実際にあれば、本文中で表すべきだという意見である。
こういう短い作品でのタイトルの重要性を考えると、若干評価を落とさざるを得ないだろう。