【+4】中陰

内容としては、大ネタクラスの傑作として十分というところなのであるが、全体的な構成の部分と一部内容の点で評価を下げさせていただいた。
当事者を含めて7名もの人間が死ぬという展開であるので、どうしても途中から状況説明がはしょられてしまった感が強い。
人数の多さと同じ死因(首吊り)であるために、作者が余計に繰り返しの単調さを嫌ったのだと推察するが、この事件の原因となった藤原氏のプロフィールを丹念に構築していった前半と比べると、後半に亡くなった人たちに関する情報があまりにも駆け足過ぎて、急速に勢いが衰えていくように感じられた。
特に死者が出るたびに付け加えられる情報が減らされていくという展開になってしまっているため、竜頭蛇尾という印象が拭えない。
ただ7名全員の死に様やプロフィールを書くというのも難しいと思うので、6・7番目あたりの事件が起こったところでの周辺のパニックぶりを書くとか、ストーリーとして後半部分での盛り上がりを作る必要性があったように思う。
そしてもう一点は、都合によって“書けなかった”内容が存在し、それが災いして全体に歯切れの悪い印象があるように感じる。
例えば、藤原氏と道連れにされた6人の人物との関係が全く明らかにされていないが、おそらく町内会の関係者同士という間柄ではないかと想像される。
この非常に重要な情報が完全に無視されているところが歯痒い部分であり、またこれが明確に出されないために怪異の核心が隠れてしまっているように見えてしまうのである。
逆に言えば現在にまで尾を引くような猛烈な“祟り”の匂いが漂うわけであるが、あくまでそれは読み手側の想像の域を出ないものであり、やはりそのカギになるものが提示されていない分、まだ“旬”を迎えていない話なのかもしれないという思いである。
いずれ時期が来れば、真相も交えた内容で再度読んでみたいと思わせるだけの作品であることだけは、最後に付け加えさせていただきたい。