【+2】ぶれ

非常にコンパクトにまとまった作品であり、怪異を的確に書き表していると言っていいと思う。
欲を言えば、自分の後ろにあった顔の露出していた状況に関する記述がもう少しあれば、ほぼ完全な内容になっていただろう。
怪異そのものについては、おそらく何かの拍子に幽体離脱(ただし本当に肉体から分離するという現象ではなく、タイトル通り幽体部分が肉体の動きについていけずにぶれたという現象である)が起ころうとしていた瞬間を本人が目撃してしまったのだろうと推察する。
それ故に、本当は心霊現象として検証したい事柄なのであり、もっと大量の情報が知りたいという衝動もある。
だが、一旦“怪談”としてみれば、これで十分目的は達せられたという印象であり、巧みに情報の足し引きが出来ているように見える。
しかしながら“満面の笑み”はこの状況を考えれば考えるほど薄気味悪いものであり、その部分に怪異のポイントを集約させた点は、作者のセンスの高さであると言えるだろう。