【+5】一枚の写真

実録的な作品であり、かなり詳細なやりとりで心霊写真について言及されている。
正直なところ、写真の構図などを文章で書き表すのは非常に難儀なものの部類に入るだろう。
当然この作品でも怪しげなものが写り込んでいる様子を描写しているのだが、やはり完全には捉えきれないままで終わっていると言える。
しかし、この心霊写真に写り込んでいるもの自体がこの作品の怪異の肝ではなく、そのあやかしが写っていた場所から結婚前の女性の死体が掘り出されたという“偶然の一致”に焦点が当たっているので、文金高島田や角隠しといったディテールが確認されているだけで十分であるという見解である。
作者としても、写真の内容よりもその因果関係が肝であると判断して、敢えて一つ一つの詳細を書き立てずに流したのだと推測する(たぶん写真の内容にこだわりすぎたら、最も肝心の顛末がおまけ扱いになってしまっていただろう)。
重厚な書きぶりであり、それが怪異の内容としっくりあっている点で、高く評価したいと思う。
心霊写真を扱った作品としては特上クラスの内容と筆致であったという意見である。



で、問題は、作品内の怪異そのものを超える“因果”についてである。
実行委員会からの注釈を待たず、前日公開の『私はここ』との酷似については、途中ですぐわかった。
個人的な直観的感想としては“全く同じネタが全然違うソースから出てきたもの”としか言いようがないのである。
(当然同じ“九州”が舞台であり、橋のたもとに女の霊が写った写真が存在し、その場所から本当に女性の死体が出たというケースが出現する確率を算定すれば、全く違う事例であると言い切る方が難しいだろう。また“集中豪雨”と“台風”という言葉の違いはあるが、実際、別の災害体験談で北九州地方の梅雨末期の集中豪雨の記憶を台風と誤認して語っていたケースもあり、川の氾濫による水害という点では共通である故に、同一事例の可能性は十分あるという客観的判断である)
『私はここ』のような必要最小限の情報しかない作品から『一枚の写真』のような大量情報の作品がリライトされて登場する可能性はゼロであるだろうし、盗作の可能性も考えられないところである。
要するに、私自身の見解としては、この作品は“寄せられるべくして寄せられた”旬の作品なのである。
別の言い方をすれば、全く同じ怪異を扱った作品が日を開けずに同じ大会に投稿されたこと自体が“怪異”なのであり、何かしらの力が働いていると感じざるを得ないのである。
ということで、本来は「作品本位」を標榜する身ではあるが、この投稿における因果を見る限り、それだけの範囲で評価をしているようでは【怪談の神】の意志が汲み取れていないという気持ちで一杯になるので、一怪談読みからの“おひねり”ということで1点加算させていただく。
(この大会もますます【神】から愛されるものになってきたのだなという感慨ひとしおである)