【+4】血の池地獄

数多くの“こっくりさん”ネタの怪異を読んできたが、ここまで特異なものは見たことがない。
この希少性だけでも十分評価できる作品であり、さらにそれを描写する筆力に勢いがあるので、読んでいて非常にテンポの良さを感じ、そこそこ長いストーリーであったがストレスなく読めた。
効果的であったのは、三者三様の個性が書かれ、そしてそれぞれがストーリーの中で役割を果たしているという、結構単純明快な構成だったように思う。
実質的な体験者である酒田君、ストーリー上の狂言回しである長井君、そしてそれらの観察者である住谷君がしっかりとローテーションを組んで、お互いの立場から話を進行させていくために、もたつきのない非常に分かりやすい展開となっているのが良かった。
そして当然のことながら、怪異の強烈さは群を抜いている。
こっくりさん”ネタの場合“憑依”が定番であり、どうしても心理学的な原因の可能性を断ち切ることが出来ないケースが多い。
ところがこの作品の最大の魅力は、第三者が見ていても明らかに物理的な異変(体験者である酒田君以外には見えないが、血の池に手をつけた直後から腕が赤くなるという現象)が“こっくりさん”の最中に生じている点である。
これが同ジャンルの怪異の中でひときわ特異性を発揮し、読者の度肝を抜くことに成功していると言えるだろう。
怪異が起こっている時の臨場感がしっかりと文章に乗っているので、十分水準以上の完成された作品と言って良いと思う。