【−2】深夜の高速道路

内容から言って明らかに怪異であることは確認できるのであるが、読んでいる側からするとあっけなく終わってしまったという感が強い。
とにかく怪異である女性の存在に関する情報が極端に少ないために、体験者の証言に客観的確証と言うべきものを見いだせないと感じるのである。
“はっきり見えた”と体験者が語っているわりには服装や容姿に関する記述がなく、実は深夜の高速道路の対向車線だから一瞬のことで錯覚かもしれないという可能性を断ち切ることが出来ていないという印象を受ける。
それでいながら“3回は見たから”と証言しているので、人間でありなおかつ同一人物であるという確実な根拠が体験者にはあると考えざるを得ない状況なのである。
複数回の目撃があるということはそれだけ怪異に対して冷静な観察が可能であると考えるわけであり、結局のところ、読者を納得させるだけの十分な説明がなされていないという印象を読み手が感じてしまうのである。
おそらく仲間内では結構怖い話として通ると思うのであるが、体験者の人柄を直接うかがい知ることが出来ない一般読者に対しては、これだけの証拠では説得力不足と突き放されてしまってもやむを得ないところであるだろう。
せっかくの怪異がまやかしっぽく見えてしまったので、厳しめに評価させていただく。