【−1】記念写真

書き方次第ではそこそこの内容になるかもしれないのだが、重要なポイントでしっかりと書けていないために、怪異の持つ恐怖感が削がれてしまった感が強い。
多くの指摘があるように、撮れた心霊写真の構図の説明で明らかに説明不足がある。
体験者の左肩に乗っている男の大きさが書かれていないため(作品の表記をそのまま受け止めれば等身大が妥当)、自然な構図で撮られていれば、腰より上が写らないどころか足の途中で寸断されるのではないかという疑念が湧いてくる。
たぶん表記内容から考えると、縮尺された男が写り込んでいたとみなした方がよいのであるが、その最も重要な情報の一つが欠落しているのは致命的である。
そして、締めくくりの体験者の気付きも、その直前に“今でも思い出すと鳥肌が立つ”という一文があるために、完全に間が抜けた印象しか残らない。
これもおそらく、怖がっていたところに新たな記憶が甦ってきて更に恐怖感に襲われるという効果を狙ったように推測するのだが、それを表現する言葉がないために“怖がっているわりには、かなり強烈な怪異に気付いていなかった”という、おとぼけぶりの方が強くなってしまっている(直前の一文がなければ、もっと印象は好転していたことは間違いないのであるが)。
結局のところ、そのような笑いに繋がるようなエンディングになってしまったために、恐怖感の希薄な内容にしか見えなくなってしまった。
とにかく締まりの悪い終わり方になってしまった分、さらに傷口を広げてしまったというところである。